私のApple Watchが流通・小売業界へIoTの扉を開いた
IoT (Internet of Things)は、多くの業界で大きなインパクトを与え始めています。クラウド上でデータの通信、分析、共有できる、埋込型センサーを備えたコネクティッドデバイスのネットワークが IoTです。現時点では、流通・小売業界でのIoT活用はゆっくりとしたものですが、確実に起こり始めています。私がアップルウォッチを買った時、それが証明されたのでした。
少し説明させて頂くと、最近私は買い物へ行き、買った物をカウンターに置いて現金やクレジットカードを渡す代わりに、新しいApple Watchを「タップ」するだけで支払いが完了しました。シンプル。それは本当に素晴らしいカスタマーエクスペリエンスです。
そして2つのことに気付きました。一つ目は、今日こんなことができる店舗はほとんどありませんが、現代の破壊的なテクノロジーの進化と同様に、1年以内にこれが大勢を占めるようになるであろうと思いを巡らせたこと。二つ目は、私がちょうど体験したことは、いわば流通・小売業におけるIoTの氷山の一角であることに気付きました。POSシステムは、様々な“モノ”や“システム”と接続して、サプライチェーンの効率を高めるとともにカスタマーエクスペリエンスを引き上げることができるのです。
私はさらに好奇心をそそられて、IoTについて掘り下げてみると驚いたことに、Internet of Thingsという言葉は(想像したかもしれませんが)消費財と流通・小売業界の関係者が作り出したことが分かりました。当時Kevin Ashtonはプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に勤務し、IoTは流通・小売業務にとって重要である、物流、サプライチェーン管理、在庫管理すべての問題に対処することを意図していました。
IoTという語が流通・小売業から始まったのなら、なぜ業界はそのポテンシャルに気づくのが遅いのでしょうか? 現在の調査からの回答は、実はそうではないということです。 流通・小売分野の最近の調査によると、世界の流通・小売業界の意思決定者の70%は、IoTの受入れ準備ができています。そこで挙げられていた主な理由は、カスタマーエクスペリエンスの向上でしたが、このテクノロジーがサプライチェーンを再構築し、まったく新しい収益源を創出する大きな可能性を秘めていることは明らかです。
IoT が流通・小売に革命を起こす5つの方法
IoTが流通・小売業界で直ぐに劇的な効果を発揮する重要な分野が5つあると思われます。
1. コネクティッド カスタマー
流通・小売業は、オムニチャネル カスタマーエクスペリエンスの提供に努めています。その担当者は、顧客が携帯電話で店舗の価格と在庫レベルをチェックすることを知っています。 iBeacon、デジタルサイネージ、スマートミラー、キオスクなどのコネクティッド デバイスは、物理デバイスとデジタル世界を結ぶエコシステムを作り、顧客との双方向のリアルタイムでのインタラクションを可能とします。 流通・小売業は収集されたデータを使って、個々の顧客が購入の意思決定を行う際の前後関係を理解できるようになり、顧客が最も受け入れやすい方法で率先的にアプローチして、顧客をサポートすることができます。
2. スマート ストア
2017年の調査によれば、2021年までに流通・小売業の4分の3は特定の顧客が店舗にいれば分かるようになり、79%は各個人に応じて来店をカスタマイズできると考えています。 IoTネットワーク上のコネクティッドデバイスは、ロケーションベースのターゲティングを可能とします。 顧客が店内のどこにいて、一番長く時間を過ごす場所がどこかが分かるようになります。 実際、ある小売業者は既に熱センサーを使って、店内の「ホットスポット」を追跡しています。 ビデオ、RFID、Wi-Fiデバイスを使って、お客様により良いサービスを提供できるだけでなく、例えば万引きを防止して店舗のセキュリティや在庫管理を改善することができます。
3. スマート倉庫
IoTは、顧客の購買行動にサプライチェーンオペレーションを統合する可能性を提供します。 オンラインと店舗内の購買データを使って、倉庫のロボットやオートメーションを動かすことができます。 RFIDは流通・小売業では決して新しいテクノロジーではありませんが、IoTネットワークの一環として使うことで、在庫管理を改善し、単なる「追跡とトレース」を超えたよりダイナミックな倉庫オペレーションを作り出します。通路や棚は、自動パレットや、あるいはドローンに置き換えられるかもしれません。
4. スマート ロジスティクス
ほとんどの流通・小売業者が、顧客への供給の方法にますます焦点を当てるようになっています。 調査によれば、流通・小売業業の65%が、現在革新的な配送サービスを模索しており、90%の企業は2021年までにオンラインでの購入と店舗での受取を実装すると言っています。GPSをロジスティクス実行のあらゆる部分を監視できるセンサーと組み合わせると、 車両の予測メンテナンス、気候および大気を踏まえた制御、完全なトレーサビリティおよび経路最適化を導入できるようになります。 重要なポイントとして、購入したものをリアルタイムで追跡できるように、このデータを顧客に提供することができます。
5. スマート ホーム
今日、スマートホームのコンセプトは、すべてIoTデバイスがドライブする、エンターテイメント、暖房、照明、セキュリティシステムの集中制御が中心となっています。 IoTは、すでに他の家電製品にもセンサーを追加しており、例えば冷蔵庫で製品の使用状況や有効期限を監視して自動補充するといったサービスを提供しています。 ビジョンに優れた流通・小売企業は、自宅のIoT対応デバイスと通信できる「スマートホームハブ」を既に開発しており、顧客に新しいレベルの利便性を提供しています。 IoTのパワーを理解する小売業者にとっては、新たな収益を生み出す広範な商品やサービスを作り出して提供する可能性が得られるのです。
実現のために今後必要となる3つのテクノロジー
流通・小売業でのIoTは、まだ採用の初期段階にあります。 しかしそのインパクトは、「成り行きを見守る(wait and see)」アプローチが小売業者にとって、到底賢明とは思われないほど破壊的な可能性があります。 IoTを迅速に活用する企業は、市場シェアを守り、競争優位を得られるでしょう。そのために必要となる3つのテクノロジーがあります。
高度なアナリティクス
ビッグデータとIoTは不可分です。 IoTネットワークでは、ますます急速に、さらにより多くのデータが作り出されます。 データの意味を理解し、アクションを起こせるようなインサイトに変えるには、洗練されたアナリティクスが必要です。 調査によれば、顧客の理解をより深めるために、2021年までに流通・小売業の75%が予測分析を実装することが示唆されています。 OpenText™ Magellan™のような、AIが強化されたアナリティクスの登場により、流通・小売業は顧客とその要求をより良く理解できるようになっています。
カスタマーエクスペリエンスマネジメント(CEM)
インサイトをアクションに変えるということは、データを取得して自動的にカスタマーエクスペリエンスに適用することを意味します。 顧客ごとの「いつ」「どこで」「なぜ」を把握すれば、これを高度にターゲティングされ、パーソナライズされた、マーケティングメッセージやプロモーションメッセージへと即座に変換し、顧客の携帯であれ戦略的に配置されたデジタルサイネージであれ、適切なチャネルを使用してフィードバックできるように、カスタマーエクスペリエンスマネジメント ソリューションが必要になります。
B2Bインテグレーション
カスタマーエクスペリエンスとサプライチェーン・オペレーションを効果的に結び付けるためには、エンドツーエンドのコントロールと可視化を提供する堅牢なB2B統合プラットフォームが必要となります。 IoTがロジスティクスと在庫管理の課題解決のために開発されたとすると、重要なビジネスプロセスに含まれるすべてのパートナーの接続とコラボレーションを確実にする、コアとなるコンポーネントがB2Bインテグレーションです。
すべての流通・小売業は今すぐIoT戦略に取り組む必要があります。 安価なコネクティッドデバイスの激増と、さらにより良いカスタマーエクスペリエンスを継続して提供することの必要性は、顧客が求めればいつでもどこでも、それぞれに特別なエクスペリエンスを創造するチャンスがあることを意味しています。 もしこれがまだSF小説のように聞こえるとしたら、食料品の支払いに時計を使うことを5年前ならどう思ったか、自問してみてください。
(当ブログは2017年11月16日に米国で発表されたHow my Apple Watch gave me a window into a world of IoT in Retail ブログ記事の抄訳です)