サプライチェーンにおけるレジリエンスとは、予測せぬトラブルや災害が起きた際にサプライチェーンへの影響を最小限に抑え、迅速に修復・回復させる能力を指します。ここ数年の不安定な社会情勢によって、以前よりも大きく注目されるようになりました。
この記事では、サプライチェーンにおけるレジリエンスが注目される背景や、レジリエンスを高める方法について解説します。
サプライチェーンにおけるレジリエンスとは
「レジリエンス(resilience)」とは、困難や脅威のある状況のなかでも、うまく適応する過程や能力を表す言葉です。
サプライチェーンにおけるレジリエンスは、予測せぬトラブルや災害が起きた際にサプライチェーンへの影響を最小限に抑え、迅速に修復・回復させる能力を指します。
一方、すべてのリスクをゼロに抑えることや、リスク対策のために根本からサプライチェーンを変更することは現実的ではありません。
そのため、いまサプライチェーン上で起きていることを可視化することや、将来的に起こり得るリスクを予測し、リスクに迅速に対応できるプロセスや最新技術を用いてレジリエンスを常に備え続けることが求められています。
サプライチェーンにおけるレジリエンスが注目されている背景
複数の企業を経由するサプライチェーン(製品の原材料・部品の調達から販売にいたるまでの一連の流れの管理)は、もともとリスク管理が求められていました。一方で、サプライチェーンにおけるレジリエンスが注目され始めたのは、ここ数年のことです。ここでは、レジリエンスに注目が集まるようになった背景を解説します。
新型コロナウイルスによる打撃
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、サプライチェーンにおけるレジリエンスが注目されるようになった大きな要因です。
日本だけでなく、世界各国で感染症対策が講じられ、外出規制にともなう事業停止や渡航規制による物流の停滞などが引き起こされました。
その結果、サプライチェーンが機能しづらくなり、世界経済に大打撃を与えました。
そのため、トラブルは発生するという前提のもと、サプライチェーンの回復能力を高める施策の重要性が高まっています。
原材料の供給元の偏り
新型コロナウイルスの登場前から、サプライチェーンのリスクとして挙げられていたことが供給元の偏りです。
現在、多くの企業はアジアなど一部の地域に原材料の供給元や部品の生産拠点が集中しており、特定の地域に依存しています。
生産拠点の集中は、原材料の需要に対する供給量の不足を招き、原材料の高騰や供給量の減少などにつながります。
しかし、特定地域への供給元の依存によって、トラブルが起きてもほかに代替手段がないため、すぐに対応できません。
こうしたリスクを避けるために、複数の供給元を持つといった施策の優先度が高くなったのです。
製品の完成まで複数の国を経由するため
グローバルなサプライチェーンは、複数の国を経由して一つの製品を作り上げるプロセスを構築しています。
例えば、原材料をA国で調達し、それをB国へ輸出してパーツを作り、その後C国で製品を組み立てるという流れが一般化しているのです。
このような複数の国を経由するサプライチェーンは、環境的リスクや地政学的リスクが高まる可能性があります。
どこか一つの国でトラブルが起こると、サプライチェーン全体が機能しなくなるため、プロセスを多様化するレジリエンスが注目されるようになったのです。
サプライチェーンにおけるレジリエンスを高める方法
ここでは、サプライチェーンにおけるレジリエンスを高める3つの方法を解説します。
サプライチェーンコントロールタワーの設立
サプライチェーンにおけるレジリエンスでは、問題やトラブルの早期発見と迅速な対応が何よりも大切です。
そのため、物流や在庫、調達といったサプライチェーン全体の状況を俯瞰的に見渡せる仕組みを構築し、リアルタイムに近い周期で状況をチェックすることがレジリエンス向上につながります。
また、サプライチェーン全体を俯瞰的に見渡せる仕組みとして、「サプライチェーンコントロールタワー」の構築が有効です。
サプライチェーンコントロールタワーを構築することで、サプライチェーンに関連する社内や社外のサプライヤーや物流業者など取引先からのデータを統合することができ、鮮度が高く信頼性の高いデータを用いることができます。
また、情報の可視化や、人工知能 (AI)や機械学習といったテクノロジーも効果的に活用し、サプライチェーン全体を管理できるようになります。
サプライチェーンコントロールタワーの特徴や仕組みについては、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらもチェックしてみてください。
サプライチェーンコントロールタワーとは?仕組みや世界規模での需要について解説
複数サプライヤーの体制を構築する
サプライチェーンが一つしかない場合、トラブル発生時の対応が困難であり、解決までに時間がかかる可能性があります。
そのため、主要部品や部材など以外は、一つの地域や国、企業に依存しないように、生産の複数拠点化や複数サプライヤーでの代替供給の体制を構築し、多重化することがレジリエンス向上に役立つでしょう。
複数のサプライヤーの体制を構築することにより、一つのサプライヤーが機能しなくなっても、別のサプライヤーから調達することが出来、製品の製造が継続可能になります。
トラブルによる損害を最小限に抑えることで、トラブルからの回復が迅速化するメリットもあります。
また、多重化の一環として国内でサプライチェーンを構築することもレジリエンスの向上につながるでしょう。
在庫の見直しを行なう
原材料や部品の調達が難しくなったときのために、これらの在庫を多く保管しておくこともレジリエンスを向上させる方法の一つです。
ただし、在庫が過剰すぎると保管コストが増加するなど、ほかの問題が発生する可能性があります。需要予測などをうまく活用し、最適な在庫量を保管するようにしましょう。
まとめ
サプライチェーンにおけるレジリエンスは、予測せぬトラブルや災害が起きた際にサプライチェーンへの影響を最小限に抑え、迅速に修復・回復させる能力を指し、事業の継続性を高めます。
そのため、レジリエンスを高めることで、より強固なサプライチェーンを構築し、安定した製品の製造が可能になります。
トラブルを防ぐことだけに注力せず、トラブルが起こっても大きな損害を被らないサプライチェーンの構築を目指すことが大切です。
また、OpenTextは、40年以上にわたりサプライチェーンネットワークのデータ連携基盤を提供することにより、調達業務や販売業務などを支援してきました。
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